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秋の夜長にシリーズ ~ピアニストの息遣い~「横山幸雄  ピアノQ&A136上・下」

執筆者の写真: OTO工房OTO工房

更新日:2018年11月1日


日本を代表するピアニストである、横山幸雄さんのQ&A形式の本(上下巻)をご紹介します。ピアノ雑誌ショパン内で連載されていたものを元に加筆したものとのことです。

実は以前、あるご縁で横山さんの某雑誌取材に立ち会う機会に恵まれたことがありました。その時の彼の印象は、物腰が柔らかくジェントルで、とても暖かい雰囲気を持った方でした。またその時幸運にも、数曲彼の弾くピアノ演奏を聴かせていただいたのですが、その音色が彼の持つ雰囲気そのもので本当に素晴らしかったです。



濃い内容 雑誌読者からの質問に答えるということで、もう少しカジュアルな内容のものなのかなと最初は思っていたのですが、彼が本気で応えたいという誠実さが伝わってきます。それでいて淡々と冷静に書かれていて、以前お会いした際に抱いた彼の印象とリンクし、とても好感が持てました。彼がこれまで培ってきたであろう様々な経験が緻密に凝縮されていて、とても読み応えがあります。本の表紙はメルヘンチックですが、内容は濃く、自分の人生をピアノにかけた、一人の人間の熱い息遣いが伝わってくる内容だと私は思いました。




ピアニストは調律師? 特に私が調律師ということもあるのでしょうが、横山さん自身がピアノという楽器について、内側から非常に深い理解をされていることに驚いてしまいました。ピアノ演奏とピアノのメカニカルな部分が、いかにリンクしてて重要なことであるかを、彼はとても理解しているのです。それは調律師と同等か、ある意味それ以上といっていい部分もあり、正に感服してしまいました。すべてのピアニストが、ピアノの機械的な部分について彼と同じ知識を持っているとは思えません。例えば海外に目を向けると、ポーランドのツィマーマンというピアニストは、やはりピアノのメカに非常に詳しく、強いこだわりを持っていることで有名です。 本書を読んでいて伝わってくるのですが、横山さんはピアノという楽器に対してとてもリスペクトがあり、興味(メカニカルや性質に)があるのだと思います。ピアノという楽器が一筋縄ではいかない、非常に深い楽器であるということをよく心得ていらっしゃると感じます。調律師としてはとても嬉しいことと同時に、読んでて身の引き締まる思いでした。 たかがQ&A本、されどQ&A本と思わす2冊です。

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